『迷家』 光宗殺害と入れ替わりを企てる時宗!? ―― 見切り発車のネタバレ考察&感想 (約5500文字)
2016年春季アニメとして始まりました、監督水島努、脚本岡田麿里でお送りする伝奇ミステリ調オリジナルアニメーション――『迷家』。
とにかく水島節炸裂というか登場人物が多く、小気味よい調子で進むんだけれど、謎が謎を呼び、謎が積み重なってはこじれていくだけで全貌が全然見えてこないお話です。
BLOOD-CやAnotherで賛否両論呼ぶ黒水島なんですが、この度の作品もそんな調子でこれはダメな水島だとか、いや俺は楽しんでるよとか色々言われている感じですね。
で、僕は後者です。わざわざ記事を書き出してしまっているのだからそれは否定できない。
というわけで、現在放送されているお話を含むネタバレ感想です。
親切に内容紹介とか解説とかしない言いたいところだけ雑然と書いていきますので、了解のうえお読み下さいまし。
目次
1.光宗の名前と死んだ双子の兄弟について
2.颯人(スピードスター)と光宗の過去に何があったのか
3.実は時宗は生きていて光宗との入れ替わりを画策!?
4.迷家は入れ替わりトリックという結末のためのミステリ作品
5.妄想まとめ
光宗の名前と死んだ双子の兄弟について
これは第一話の描写から示唆されていることで、方々でも言及しつくされていることですが、どうやら光宗には双子の兄弟が居るようですね。漫画とかWOWOWで放送された5話からするに、「時宗」という名前らしいですが。
一話光宗の白昼夢において、過去に転落事故のようなものがあったことが示唆されています。ただ、彼は橋の下ではなく、手すりから橋の上に落ちたようで、それによって気を失っただけのようである。その後、病院で目覚める描写があります。
しかし、母親らしき人物は光宗ではなく、もう一つのベッドへ駆け寄ってしまう。それに対し、僕はこっちだという光宗。
その後、真咲と会話で、自分の名前「光宗」を褒められたことがうれしくて泣き出してしまったことなどから、彼は母に愛されていなかった――溺愛されていたのは「時宗」の方であったという考察がなされています。
そしてさらに、颯人(スピードスター)との会話で、光宗と名乗るっていることに彼が違和感を示す描写があることから、実生活において、光宗は時宗を名乗っているのではないか、という考察がなされる。(単にハンドルネームを使わないことに対する反応という可能性もあるが)
つまり、光宗と時宗は過去なんらかの事故(橋にまつわる)に遭って、時宗は死んだが、そこで死んだのは光宗であると処理(死亡届)され、以後光宗は時宗として生きている、というのが大方の考察であるわけです。
「縫い包み」、「母親」、「愛情」、「本当の自分」
光宗は言うなれば被虐待児なんですね。ここまでの情報から具体的にはわかりませんが、ネグレクトか、まあとにかく「愛」を与えられず育っている。愛着に障害をもっているのであるとすれば、彼の惚れっぽさというのも頷ける気がする。
自分を偽って生きている彼は、自分のことをわかってくれそうな女性が居ると肩入れして依存的に振る舞ってしまうのかもしれない。
特に真咲が彼の本当の名前を承認してくれたことは、彼にとってクリティカルだった。
とまあ、ここらへんが現在の情報から読み取れるそれっぽい整合性のとれた考察ということです。
颯人(スピードスター)と光宗の過去に何があったのか
で、ここから少々自由な連想、予測、というかアクロバティックな思索をしていきたいなと思うわけですが、やはりキーマンは颯人かなーという気がしますね。
光宗の幼少期を知っている唯一の登場人物。
ここからは、実生活で光宗は時宗として扱われているという前提で進めます。
「監禁」、「理解者」、「溺愛」、「鳥籠」
オープニングを注視してみると、颯人の背景にはいくつかきになる単語が並んでおります。監禁、理解者、溺愛、鳥籠。
なんだか物騒ですね。
光宗が自分の意志で生きることをせず、颯人に依存させられていることの暗喩かもしれませんが。
二人の過去について具体的なエピソードというと、颯人の言う通りにするようになってからいじめられなくなった、というのが唯一のものです。
しかし、ここからだけでは何故颯人は光宗にそんなに構うのかというところはよくわかりません。
執着の理由に過去の真相のヒントがあるのだと思いますが、さて。
ここに関連して気になる点を一つ言いますと、颯人は光宗が時宗と入れ替わっていることを知っているのだろうかということがあります。
もっというと、この入れ替わりに颯人は介入しているのであろうかということ。
ここはいじめのエピソードと事故との時系列がどうなっているのかということにも関係してくると思います。
俺の言う通りにすればいいと依存させたあとに事故があったのか。
であるとすれば、親に溺愛され、そしておそらくは愛された理由――優秀であった時宗に成り代わることを提案したのは颯人であったのでは、という想像も面白いなと思いますね。
事故によって時宗が死んで、入れ替わる経緯はいったいどのようなものであったのかということです。
時宗が死んだことを受け入れない母を見て、自己判断で光宗は時宗を名乗ることにしたのか。
当然ながら、自然には自分は光宗であると主張するでしょう。周囲の人間にもアピールするはず。そうであれば死亡届が時宗として出されることが当たり前の流れです。異常な母の妄想だけではどうにもなりません。
とするとやはり、光宗は自ら時宗を名乗ったと考えられる。その選択には颯人の入れ知恵があったのではないか、という想像ですね。
さてさて、ここからもう一段階飛躍します。
颯人は光宗が時宗を名乗る経緯を知っているとして、そもそも「事故」とはなんであったのか。
というか、
――本当に事故であったのか
最早断片情報を拾って膨らませた妄想です。
マイマイはジャックの様子を見に行こうとした光宗に対して、彼は優しさをもった人間なんじゃないかと思っている節がありますね。
で、そんなマイマイですが颯人の光宗に対する過干渉を糾弾する描写があります。
それに対し颯人は、あいつのことを何もわかってないと返す。
一話の段階では、リオンが人が良さそうなふりしてとんだ食わせ物と言及したりもしている。
「人がよさそうなフリしてるけど。とんだ食わせ物かも……」
そう、光宗は人畜無害の優しい男の子なんかじゃないし、時宗は事故で死んだのでもなく……
――光宗が殺しちゃったのでは!?
はい、妄想です。
しかし、あの橋の上で遊んでいたとき、光宗の中にふと芽生えた何かが、時宗の命を奪い去ったという真相も、まったく否定しきれる要素もないと思います。
もしかしたら光宗自身その記憶を封印していて、颯人だけが知っているなんてこじれた真相も……。
光宗の中には悪魔が眠っていて、颯人だけがそれを知っているんだ……。
という妄想。
ちなみにですが、5話の最後で時宗くんが出てきます。
というか時宗とペンギンの縫い包みの巨大なキメラの(おそらく)幻覚。
これはOPでも一瞬サブリミナルのように出てくる奴ですね。
ペンギンの縫い包みの中から覗く時宗の目。
怖い……。
幻覚はおそらく登場人物の内面を反映したものなので、光宗の深層心理では、時宗がこんな恐ろしい存在として残っているのかもしれません。
それは母の愛を自分から奪う存在としての憎悪なのか、もしかして、自分が殺した相手の恨み、復讐に怯える気持ちの現れなのか……。
と、これはここらへんにしておいて、次の妄想に行きます。
そう、「妄想」、まだ続きます。楽しいですね。
実は時宗は生きていて光宗との入れ替わりを画策!?
で、結論からいいましょう、どのような妄想をしているかというとそれは、
――時宗は実は生きているんだよ説!
じゃじゃーん!
はい、これは掲示板とか眺めていたらちらっと言及してる人がいました。
実は時宗は生きていて、黒幕で、光宗と入れ替わろうとしてるんじゃないか、という仮説ですね。
その根拠として上げられていたのはキービジュアル。
キービジュアルをよく見てみると集合絵ではシューズを履いている光宗が、真咲とのツーショット時にはブーツになっていると。つまり入れ替わってんじゃないのこれ、というわけなんですね。
僕が見た書き込みはさらっとこのくらいの言及だったんですが、これを少し膨らませたいなと思うんです。
(ところでこのブーツについてですが、ブーツを履いてる登場人物というのは周囲に何人か居ます。お話の展開によっては、なんらかの理由で靴を失った光宗が、これまた何らかな理由で誰かから譲り受けた、と言う可能性もあるかもしれません)
この説について補強できる要素として思いつくのは、リオンの反応があります。
彼女の設定や、彼女自身の独白によると、彼女には「死ぬ人がわかる能力」があるらしい。
で、リオンの一連の反応は光宗の死を示唆しているように見えるのですよね。
最初光宗を見て驚いたシーン、一瞬姿が消えただとか、光宗は本当にここに居るのかとか、諍いを中断するために利用しただけといいますが、真意はどうなのか。
「光宗ってここに居る?」
そんなわけで、「入れ替わり」説です。
光宗が死んで、どこかで時宗に入れ替わっちゃうんじゃないかと。
だとすると時宗は黒幕的な立ち位置になりそうです。
その可能性を考える点としてもう一つ考えたのは、マイマイの周辺ですね。
ジャックとマイマイのことです。
こんなアングラで突拍子もない企画に、同じ学校の同級生が偶々同乗するなんてことがありえるんでしょうか。本当に単なる偶然ですよーで処理してしまうのか。
誰かが企図したものではないのか。
さて、そこでマイマイの企画参加の理由を考えてみましょう。
マイマイは何故この企画に参加を決めたかというと、まあ凄くしょうもないと言えばしょうもない理由で、「好きだった男の子に振られたから」です。
問題はこの男の子で、満宗に似ているんですね。
この問題に関連して考えたいのは、マイマイが見た「でっかい光宗」です。
のちにマイマイが訂正するところでは、あれは思い返してみると満宗ではなくて、「自分をふったあいつ」であるようです。(光宗に対する言動と、次回予告から)
「それにあんたじゃなかったから。光宗なんかじゃ……」
この強調はなんなのか。
実はそいつが時宗で……という妄想ですね。
迷家は入れ替わりトリックという結末のためのミステリ作品
一見するとこの作品、分かり易いのは光宗と時宗が入れ替わっていること、そして颯人がそこにどう関係しているのか、それを巡る物語が主軸なのかな、というあたりなのですが、実はそれはミスリードなのではないか。
つまりこれは、トリック披露のために作られたミステリ作品なのでは?
光宗の過去を明らかにするお話に見せかけて、実は時宗が光宗と入れ替わるための物語であると。
とすると、制作側はこっそり入れ替えたいわけですね。
あのキービジュアルのように、最後真咲と光宗の逃避行のように見せかけ、実は既に光宗は死んでいて……というところを示唆して終わりたい。
そうすると、この作品がいったい何をしたいのかわからないことにも、なんとなく腑に落ちる思いがします。
まあもしかしたらこれらの伏線自体が釣りということもあるかもしれませんけれど!
あ、ここでもう一つ。仮に時宗が生きているとして、彼の死体はどうなったのか。
そう、みつかってないですね。
時宗の川流れです。
ですから、一人残ったのは光宗なのか時宗なのかという話になる。
問題は命を取り留めた時宗が、いったいどういう経緯で身元を明らかにせず、生き続けてきたのかということですが。
そこらへん、また別の要素が絡んでくるんですかねぇ。
真咲関連とか、納鳴村の真相とか。
真咲は確実に何か知っています。
黒幕に通じているのか。それとも個人的な因縁なのか。さて。
妄想まとめ
整理しましょう。
今回どんな妄想をしたのか。
母に愛されなかった光宗。
そんな光宗をいじめから救い出す颯人。
その後起きた橋の上での事故。
実はあれは事故ではなく、光宗が魔が差してやった。
目覚めた光宗はそれを覚えていない。
颯人が光宗に時宗として振る舞う入れ知恵をする。(正直経緯は根拠薄弱、曖昧)
ボロが出ないように颯人の言われるままに時宗として生きる光宗。
しかし本当の自分を偽って生きる矛盾に耐え切れず企画に参加を決意する光宗。
偶然の興味を装ってそんな光宗を追う颯人。(責任感?罪悪感?別の何か?)
しかしこの企画は仕組まれたもので、一部の参加者は誘導されている。
その黒幕は行方不明になった時宗。
時宗は光宗と入れ替わることを画策している。
リオンは時宗に殺害される光宗の死を予見している。
迷家という作品自体、実は入れ替わりという結末をやりたいがためのミステリ作品。
って感じでしょうか。
うーん、こうして眺めてみると突拍子もないですね。
根拠も録にないし。
何が問題かっていうと、OPとかでメインに据えられている真咲の存在意義とかがよくわからんのですよねこれ。
しかし、視聴しながら考えたことをそれっぽく繋げるのが楽しかったので記事にしてみました。
真相がどう転ぶのかは全然わからないし、早くも次回で前提をひっくり返されるような事実が明らかになる予感がして戦々恐々なんですが――ともかく、「ひぐらしのなく頃に」ばりに自由な考察のしがいのある作品だと思うので、そういうのが好きな方にはぜひ見て欲しいですねぇ。
うん、こんな記事をここまで読む人は既に視聴済みだと思うけれど。
それではノ