迷家 第8話までのネタバレ感想・考察 「トンネルの向こうの納鳴村からやってきた使者、真咲」(約4000文字)
迷家第8話は真咲ちゃんの過去回想のお話でした。
過去に一度、いとこの「れいじ」くんに連れられて納鳴村探索に来た真咲。
此度のツアーよろしく、二人は納鳴村らしき集落をみつけます。しかし、ここでも幻覚に襲われ、れいじくんは行方不明、真咲は崖から落ちて何故か村から出ることができた、という内容でした。
ならば真咲はこの場所から出る方法を知っているのではないのかという方向に議論は進むわけですが、真咲ちゃんの回答は終始支離滅裂です。真咲の言っていることの何が本当で何が嘘なのか。そして何が目的なのか。
というわけで、今回は真咲とみんなの問答を振り返りながらことの真相を考察――という名のいつもの妄想を繰り広げようと思います。
目次
1. 真咲の正体とトンネルの向こう
2. 偽の納鳴村は本当の納鳴村へ入るための試金石
3. 行方不明の間、真咲はどこで何をしていたのか
真咲の正体とトンネルの向こう
さて、結論から言いましょう。
トンネルの向こうには本当の納鳴村があって、真咲はそこから遣わされてやって来たのではないか。
はい、そんな感じでその根拠を示していこうと思います。
れいじくんを探しに再びやってきたと言う真咲は、しかしここでは彼をみつけられず、もしかしたら別の集落にいるのではないか、と何気なく漏らしました。そして、そのことを突っ込まれるとあわてて取り繕い、支離滅裂な返答をすることから、別の集落が存在しているということはついうっかり喋ってしまった真実なのではないかと思われます。
「ここには居ませんでした、たぶん別の集落かも」
ここで既に、真咲が知っているらしい別の集落には人が居て、ならばそれこそが本当の納鳴村であるのではないかという推察がなされるわけですね。
さて、その後の会話ですが、その集落がトンネルの向こうにあるのでは、とダーハラが言い出すと、さらに慌てた様子で真咲は必死にその可能性を否定しようとします。
こうなると、トンネルの向こうに別の集落があるという可能性は俄然信ぴょう性を増してきますね。そして、その集落に人が来ることはまずいと真咲が考えていることも。
「あそこはダメです!」
しかしそうすると一つ妙なことがあります。真咲は先週のお話で、光宗をトンネルの向こうへと率先して導く態度を示していました。
曰く、自分と向き合ってトンネルを抜けることができれば、元の世界に戻れると。
何故真咲は光宗がトンネルを抜けることは歓迎し、それ以外のみんながトンネルに興味を持つことは難くなに拒否しているのでしょうか。
先週のやりとりを思い返せばわかりますが、「光宗くんと居るとなんだか勇気が出てくる」と言ったり、真咲は光宗に対してかなりの信頼を示していますね。
廃駅で光宗に手を差し伸べたのは、光宗が誰も自分を知らないところで本当の自分として生きてみたいということを述べた直後でした。
そして最後に、光宗は本当の自分のままでみんなに受け入れられるという言葉を投げかけるのです。
「僕は時宗じゃない。誰も知らないところで、光宗として生きてみたいと思った。それでツアーに参加した」
「光宗として……っ」
「――行こう」
「先に行ってるね」
「えっ?」
「光宗くんは、誰にも似てない、あったかい手と、あったかい気持ちを持っている。自信をもって。きっとそのままの光宗くんで、みんなに受け入れてもらえるはずだから」
つまりこれらのことから、世俗から隔絶された共同体(誰も知らないところ)で協調して生きていくに足る人格を有した(みんなに受け入れられる)人物として、真咲は光宗を信用した、よってトンネルの向こうにある本当の納鳴村へ光宗を導くことを決めたのではないかと思われるわけです。
偽の納鳴村は本当の納鳴村へ入るための試金石
であるとすれば、自分と向き合うこと(幻覚に立ち向かって乗り越えること)というのは、心に抱えた問題を解消し、安定した精神を持った人であることを証明する試金石であるということなのではないでしょうか。
ツアー参加者の様子を見てもわかるとおり、寄せ集めの社会不適合者たちが付け焼き刃の共同生活を成功させようということ自体が、そもそも不可能な試みなのです。
仮に納鳴村という世捨て人たちの楽園があったとしても、そのような者たちが簡単に訪れられるような場所にあるはずがない。異分子を容易に引き込めば、すぐにコミュニティは瓦解するでしょう。
だからこそ、ダミーとして、そして試験の場として、誰も居ないはずであるのに誰かが居たようにしかみえない、作られたあの村が存在している。
埃まみれの家屋と手入れされた畑たち。そこで生活はする者はいないが、管理している者たちは居る。
(ユーノチェック)
(ブルドーザーなんこ)
トンネルの向こうでコミュニティを築く住民たちが、偽の納鳴村を管理し、そしておそらくは、訪れる人間たちを試しているのではないかということですね。
回想の中で出てきて、ここから先に行っちゃいかんというトラックに乗ったおじいさん。もしかしたら、納鳴村の住人で、物資調達にでも行く途中だったんじゃないですかね。(考え過ぎか?)
第一村人発見
「どこに行くつもりかな」
「あの、この先に――」
「先には行ってはいけない」
「どうしてですか」
「いいから戻りなさい。麓の駅まで送って――」
行方不明の間、真咲はどこで何をしていたのか
トンネルの向こうに集落があって、真咲はそこからやってきている。
こう考えるもう一つの別の根拠があります。
あ、ところで、僕は真咲は本名ではなくて、彼女が探している行方不明になった少女から借りたものじゃないかと推測したのですが、これはどうやら違っていたっぽいです。
8話の内容によれば、真咲は実際に村にやってきて、それから家に帰っていない。
つまり、行方不明という扱いのままである。
真咲が人を探しているというのは事実のようですが、どうも家に帰らずずっと留まって居たようです。
(突如核心的な質問をするぴぃたん)
「じゃあ、村から出れたとき、一度でも家に帰った!? もう村に行けなくなったんなら、家に変えればいいじゃない!
地縛霊じゃなかったから帰れるでしょ! 親も心配してるだろうし!」
「若干ブーメランだよ、ぴぃたん」
では、彼女はどこに居たのでしょうか?
はい、ここまでの考察から順当に考えるならば、当然トンネルの向こうの集落で過ごしていたということになるでしょう。
行方不明の少女が誰にも保護されず人探しをしながら生き伸び続ける。
それこそ、世俗から隔絶したコミュニティがあったと考える方が自然なのではないでしょうか。
8話の問答の中では、よっつんを探していたとき真咲はどこで何をしていたのか、という言及もあります。トンネルの向こうと何かしらの連絡をとりあっていたとかありそうですね。
(漫画版では、みなが寝静まった夜半に一人だけ抜けだしてどこかへと出て行く真咲のシーンがあったりするのも怪しい)
終わり
というわけで、なんとなく村自体の真相が見えそうな8話でした。
一応筋は通っている気はしますが、さて解答はどうなるでしょうか。
この件に関わらず、他にも色々言及したいことはありますが、雑然としちゃうのでこのへんで。
細々としたことは下の方に箇条書きで追記したりしようかなと思います。
それでは。
雑感色々
・思い返すと1話のとき、運転手が暴走してジャックが暴れ始めたときとか、真咲は何を思ったのか「もっとちゃんと、お互い――」と協調し合うことを望むような発言をしかけていましたね。この先でみんなにふりかかえることと、そしてそれを乗り越えるためには心を乱して仲違いしているようではいけないことを知っていたから故の行動だったのでしょうか。結局ゲロっちゃったけれど。
・村で共同生活をするに価する人間を見定めるという意味合いもあるのかもしれませんが、廃駅でのやりとりを見ると、「村でずっと生き続ける覚悟があるか」を見定めるという意味合いもありそうです。だって、帰してしまったら村のことをがばれてしまいますし。
ヴァルカナは言動を見ている限りその覚悟はありそうですよね。ところで彼も幻覚を見たりしているのだとしたらどのようなものを見てるのかな。
・回想を見ると、真咲はあのときから幻覚が見えていませんでした。なんこさんの言う通り、真咲には徹頭徹尾乗り越えるべき過去というのがないということなのか? でも、ある意味運転手と同じように人探しに執着しているのですよね。ここらへんの整合性はちょっとよくわからない。
・真咲は崖から落ちたあと、村人に保護されたという経緯なのでしょうか。気になるのは、一度トンネルの向こうに入ったあと納鳴村から世俗に戻ることはできるのか否か。あのおじいさんが住人だとすると出ることは可能そうですが。一度入った人が出ることはやはり許可されなそうですが。
(ヒロインs)
・まさかのケツくん再登場。しかもいきなり矢で射ろうとするとか、幻覚でも見てんのか。
・光宗はそのままの自分で「みんな」に受け入れてもらえると言った真咲ですが、7話で村に戻った光宗はみんなが優しくしてくれることを受けて、彼女の言葉が本当だったと考えましたね。しかし、結果は真咲に対する魔女狩りのためのだまし討ちでした。このことからも、「みんな」というのがトンネルの向こうのコミュニティのことなのじゃないかと思えたりします。
「真咲さんの言ったこと本当だったのかもしれない」
「真咲?」
「もっと自身を持てって。このままの僕でみんなに受け入れてもらえるはずだって」
・4話での真咲と光宗の会話。光宗の真咲に対する信頼を示す言葉を聞いて真咲は「ごめん……」と涙したわけですが、これはやはりこの場所の真実を知りながら、全てを隠し騙したままツアーのみんなを試していることへの罪悪感ということなんですかね。村の真実を言うわけにはいかない、乗り越えられなければ村へ招くわけにもいかず、この場所で迷わせ朽ちさせるしかない。そういう意味では残酷です。
「真咲さん凄いよ! 思いやりがあってちゃんとみんなのこと考えてくれてて……。だから、僕の名前のこともちゃんと話そうと思って」
「ごめん……ごめんなさい……っ」