アイドルマスターシンデレラガールズ 20話 感想 (6691文字)

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 さて、1クール目、6話を彷彿とさせるような、胃の痛くなる第20話。

 正直、今回のお話をどう捉えるべきなのかよく見えてないのですが、書いてみれば何か少しはわかることがあるかなと、今週も感想記事をアップしようかなと。

 

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 「秋の定期ライブ(Autamn Festival)」

 部長曰く、「美城プロダクションを代表するアイドルの共演の場」らしい。

 そこで、「Project Krone」を新しい美城プロダクションのイメージ戦略上の広告塔として大々的にお披露目するよと。

 

 ただし、このライブはそれだけが目的ではなくて、この美城常務の主導する路線に競合して会社としての戦力足りうるアイドルの売り出し戦略を提示できるかどうか、そのための試金石であると。

 いやまあ好意的に受け取るとですがね。冬の舞踏会を前に急な審査。しかも、乗務の売り出し戦略にCPのアイドルも使うよって。多くの視聴者に嫌がらせじゃねえか!と受け取られるのもやむかたなしだし。

 

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 冬の舞踏会へ向けていっぱいいっぱいだけれど、なんとかみんな頑張って希望へ向かって走っていたところへこの冷や水。

 プロデューサーも声を荒らげて焦りを表しちゃってます。

 「アイドルの自主性を尊重する。それが、君のやり方だったと思うが?」なんて言われる始末。

 まあいやらしい! なんていやらしい人なんだ美城乗務!

 

 しかしこれは図星でもある。だから是が非でも突っぱねるようなことはできなかった。

 

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「二人にとって、決して悪い話ではないと思いましたので……」

「複雑だね。彼女たちは君が見つけたシンデレラたちだ。君にとっても決断のとき、だな」

 

 プロデューサーはシンデレラたちがその顔に浮かべるであろ「笑顔」を道標として彼女たちを見つけ出してきた。その笑顔というのが彼女たちのどんな道先にあるのか。それはこれまで歩んできた一つの延長上にしかないのか。それが今回のお話の一つのテーマだと思います。

 

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「お城へ着くにはどちらの道を行けばいいの?」

 

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「頑張るしかないね。何がなんでも、頑張るっきゃないじゃん!」

「うん、今みんなのお仕事、うまくいき初めてるもん」

「はい」

「ここで諦めたくないです」

「再び、天上の輝きを目指そうぞ(また、アイドルフェスのときみたいなきらきらとしたライブをみんなでしましょうね!)

「私も頑張る」

「私も!」

「そうだねみんなで頑張れば大丈夫にゃ」

「だね」

「こんなとこで負けてらんないよね。だって、ニュージェネでやりたいこと、まだまだあるもん!」

「未央ちゃん。ですよね、私頑張ります!」

「うん」

 

 いつもの如く、未央が口火を切って、それに続くかたちでみんながCPで掴む未来への決意を表明する。

 この時点で新ユニットの件は伝えられていないわけですが、未央と卯月の反応に凛は「(やっぱりみんなを裏切れないな)」みたいな様子です。

 

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 実のところ、加蓮と奈緒と組むユニットには「何か」を感じているわけなので、自分にはニュージェネが何より大切だからというような固い意志ではなく、とりあえず葛藤を捨てることができそうなことへの消極的安堵ですね。――ま、やっぱりこの状況じゃあ新ユニットなんて言ってらんないよねぇ。断るしかないっか。

 

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「どうしたのアーニャちゃん?」

「なんでも、ないです」

 

 さて、一方でこの決意表明の流れの中、一言も声を発していないのがこの二人、LOVE LAIKA。

 凛とは対称的にアーニャは未だ葛藤の中に留まり続けている様子。

 

 実のところ、CPの中では最も焦点の当てられることが少なかったのがアナスタシアです。

 LOVE LAIKAとして美波と一緒にユニットを組んではいたのですが、ユニットとしての物語的な役割としては、7話で危機に瀕するニュージェネに対して解答を提示する立ち位置として処理されてしまっていたので、他のユニットと比べると影が薄かったと言わざるを得ません。じゃあ美波はどうかというと、アイドルフェスへ向けてCPのリーダーとしての役割がクローズアップされたので、結構出番は多かったのですよね。

 

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 美波に相談するべきか迷うアーニャ。

 アーニャはみんな姓名(フルネーム)で登録するんだなぁ。パパ。

 

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 美城社内に大々的に掲げられる「Project Krone」。アイドルの姿を伏せる「coming soon」の文字に自らの姿を幻視する。

 そうして、立ち止まるアーニャにぶつかるアイドルが一人。

 

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 お、ゲームやってない俺だが、鷺沢文香ちゃんやろ、知ってるで。

 っていうか、顔暗すぎない? 目の下の隈なのか皺なのか、顔色悪すぎないアニメのキャラデザ?

 

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「初めてのことばかりで、とまどうこともありますけど、でも、それが、読んだことのない本のページを捲るみたいに、どきどきして。だから、今回のプロジェクトも、やってみれば、また新しいページが開けるんじゃないかと思って」

 

 「Project Krone」としての活動が決まっている文香と唯ですが、文香はアイドルになること自体に消極的だった様子。でも、確かに不安もいっぱいあったけれど、踏み出して見れば新しく見える景色はどきどきわくわくとさせてくれるものだったと語る。そんな文香にアーニャは合宿での美波の姿が重なる。

 

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「デビューしたいってのももちろんだけど、私、奈緒と凛と三人でもっと歌ってみたい。この前三人で合わせたとき、凄くいい感じだった。この三人なら、きっと凄いことができる、そう思えた。凛はどうなの、あのとき」

「それは……」

 

 CPとして頑張っていこうとするみんなの決意を聞いて、TPへの参加はきっぱり断ろと――実際そのようにしたのですが、加蓮の言葉を聞いてすぐに心が揺らいでしまいます。

 加蓮が感じた「何か」というのは、凛が感じたものでもあったわけですね。CP、そしてニュージェネへの義理からそれは見ないようにしていたわけですが、真正面からその手を取っ手ほしいと差し出す加蓮の姿勢に、気持ちが引き出されてしまう。

 

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「でもね、それでも私は賭けてみたいんだ、私と奈緒、そして凛の三人で歌うってことに。私たちが感じた何かは本物だって信じてるから」

 

 このセリフの中に込められたものも、何か象徴的である気がしますね。

 「何か」を「感じる」こと。未知、期待、可能性。それに賭けるということ。踏み出してみるということ。踏み出してみなければわからないということ。

 

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「チャレンジは大事にゃ。あ、チャレンジといえば蘭子ちゃんも」

「ほ?」

「これぇ」

「ひぃ!」

「そうそうハロウィンイベントのPV撮影。あんなに怖いもの苦手だったのにぃ」

「う゛、くぅ~~、い、未だ克服するには険しき山ぞ」

 

 なんだこのかわいい生きものは。

 

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「苦手なもの逃げない、偉いです」

「いいえ、挑戦するのは楽しいから(否、険しき山を征服するは我が歓喜なり)

 

 「挑戦」することは「楽しい」ことだと(突如標準語で)言う蘭子にはっとするアーニャ。

 

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 「挑戦。新しいページ」

 

 文香と出会い、蘭子と会話して受け取った言葉を反芻するアーニャ。

 揺れる自分の気持ちを美波に相談しようかと悩むが、画面はタッチされないまま明かりを消す。

 

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 約束の時間に現れた凛は、トライアドプリムスの新曲を一緒に歌うことになる。

 加蓮と奈緒と共に歌う中で、凛は確かな手応えを抱く。

 そんな凛の姿を目にしたプロデューサーは、事務所に戻ると、アイドルフェスの成功で笑顔を浮かべるCPの集合写真をじっとみつめる。

 そこへ決意を胸にアーニャがやってくる。

 

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「合宿のとき、美波言ってました。アイドルになるの、冒険だったと。不安だったと。でも――」

《私ね、このプロジェクトに参加するまで、自分がアイドルになるなんて考えたことなかったの。本当に想定外で、私にとっては、一つの冒険だった。みんなと出会って、そしたらユニットデビューが最初に決まって、嬉しかったけど、不安だった。でも不安は半分こできたから。一緒に》不安を乗り越えて見えた景色はとってもどきどきできるものだったから。冒険して、一歩踏み出してみて、よかったって思えたから。《次のライブもね、きっとまた新しい景色が見えるチャンスなんだろうなって。まとめ役だからじゃないの。今度はみんなと一緒に何が見えるのか、私自身が確かめてみたいの》

 

 回想の台詞を全文起こしてみると一人でかなり喋ってますねwww

 文香も最初は自分がアイドルになるなんて思ってなかったと言ってましたね。でも、そこから一歩踏み出して、冒険してみたら、そこから見えた新しい景色は自分をどきどきさせてくれるものだった。

 まあちょっと脚本の側から考えてみると、初めから文香にこの台詞を言わせる予定だったというのでなく、美波のこの台詞ありきで、文香を登場させるにあたって、自然とこの台詞をあてることになったという感じなんじゃないですかね。

 しかしそれは、二人の台詞に象徴されていることが、アイドルマスターシンデレラガールズのテーマの一つだからこその必然なのでしょう。

 

「美波、冒険するどきどき、勇気、教えてくれました。私、でも不安です。美城乗務のプロジェクト。ソロで。知らない人のところで。でも、みんな今チャレンジしてます。冒険して、どきどき、きらきら」

 

 兎にも角にも、今回のお話において、アーニャは迷い旅の先々で同じ経験を口にする人々と出会った。そして彼女たちに後押しされる形で勇気をもらい、アーニャは自らがゆこうと思う道へと一歩を踏み出すことができたのでした。

 

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「アナスタシアさん、あなたは今度のプロジェクトに参加して、笑顔になれると思いますか?」

「わからない、です。まだ、みんなのように笑顔になれるか」

「進んでみなければわからない。進みたいかどうかです。それがどんな道であっても。乗り越えた先に笑顔になれる可能性を感じたなら、前に進んで欲しいと、私は思います。あの時の笑顔の、もう一歩先を見つけられると思うのでしたら、私は、全力でその道をサポートします」

 

 さて、初めにプロデューサーに提示された、今回のお話のテーマに対する解答ですね。

 シンデレラが笑顔になれる道行はどれなのか。それは一つだけなのか。プロデューサー自身がアイドルを見出し、道行を示し、その道をアイドルと共に歩むというのも一つの行き先。でも、アイドル自身が道を見つけ出し、その道をプロデューサーが共に歩むというのも一つの道行であると。

 

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 自らみつけた道の先に待ち受けているものが、ただただ自分を楽しませ喜びを与えてくれるものかどうかは分からない。だからこその勇気。分からないけれど、「何か」に自分を投げかけて、どきどき、きらきらさせてくれるものを掴んだ仲間や他のアイドルの姿を見てきたから。

 

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「私も、ずっと美波に相談したかったです」

「え?」

「でも、それだといけない気がしました。今まで私、一人で決めたことなかったです。だから、変わるならそこから変わらないとと、思いました」

 

 みんながそうしたように、自分も勇気を持って、自分が感じた「何か」に踏み出していかなければいけない。

 もし美波に相談していたら、年上のパートナーで、CPの中で一番大人で、みんなの厳しくも優しいリーダーは、快くアーニャの背中を押してくれたのかもしれない。でも、今自分が踏みだそうとしているところは、そんな頼れる美波のいない場所。不安をわかちあって、一緒に未知へと踏み出してきたLOVELAIKAでありCPであったけれど、ここからは自分で勇気をもって、決めなくてはいけなかった。

 

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「星、ここからじゃあまりみえないねぇ」

「はい。でも、今見えないだけ」

「きっと、そうだね」

 

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「迷ってるって、どうゆうこと……。迷うことなんて、なくない。これからみんなで力合わせて、立ち向かおうってときじゃん」

「私も、初めは断るつもりだった。でも、感じたんだ。奈緒と加蓮と歌ったときに、新しい何かを」

「新しい何か?」

「それが何なのかわからない。わからないから、それを確かめたいの」

 

 美波とアーニャは落ち着きましたが、今回のもう一人の主人公であろう渋谷凛の問題がまだ解決していない。

 解決していないというか、凛自身の意志はアーニャ同様決まったのだが、人間模様が変われば、その行く先も自ずと変わるもの。こちらは一筋縄では行かない様子。

 

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「わたし、この三人だからここまでやってこれた、この三人ならどんなことでも乗り越えられるし、どんなことでもチャレンジできるって。しぶりん、その、新しい何かって、ニュージェネじゃできない? 私たちとじゃだめなの?」

「わからない……わからないっ」

「しまむーはどう思うの」

「え! えぇと、あの、わたし……わたし。……わかりません。わかりません、わたし……」

 

 僕にもわかりません。どうしたらいいのこれ。ちょっとスタッフ―!スタッフ―!

 

 まあ二人にとっては青天の霹靂ですからね。一時解散の危機も乗り越えて、一度綻びかけた糸をもう一度結び直してここまでやってきたニュージェネレーションs。未央はリーダーとしてその責任感もあってか率先してアクションを起こしてきた。美城常務の件があってからは、より一層ユニットのこれからについて決意新たに考えようとしてきたわけです。そこへ当の美城常務からの引き抜きときた。そりゃあ「そんな簡単なことじゃないじゃん」。簡単に割り切れる問題ではないのです。

 ただまあそれでも言うと、答えはラブライカの二人にあるのかなと。

 結局これは6話の構図を踏襲している。答えを知っているラブライカと、それに気付くことができないように魔法をかけられたニュージェネ。

 ただし、今回違いがあるとすれば、シンデレラを舞踏会に導く魔法使い兼王子様がかぼちゃの馬車にされてしまった呪いから解かれていることですかね。

 そこらへんから、物語の展開がどう変化してくるか。それはとりあえず先を見てみたいと思います。

 

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 prpr

 

 

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「本田さん、どうしました……っ、本田さん、待ってください! 本田さん!」

 

 このイケメン具合である。もう多くは語るまい。6話の時のおどおどびくびくとしたプロデューサーではないのだよ。これには凛ちゃんもあのときとは違う視線を向けざるを得まい。よかったね凛ちゃん。君のPはちゃんと王子様しとるで。

 

 ↓ あのときの視線(だがこれはこれでいい)

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 未央とプロデューサーの姿をみつける莉嘉。なんの意味もなくこのカットがあるとも思えないので、今後の未央の決断に何かしらの影響を与えるのだろうか。とすると、17話を通じて莉嘉が得たことを考えてみる必要性がありそうだが。

 

「だって……あたしはあたし」

 

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 スモックか!

 

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 暗い部屋で楽譜をみつめる凛。

 

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 7話で別世界のように暖かく明るい光に包まれていた卯月家とはうってかわって、どこか深い闇に沈んでしまったかのような卯月の部屋。

 

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 一方、かつて引きこもったときのように鈍色にくすんだ部屋で寝そべる未央だが、次の瞬間には決意を表情に湛えて身を起こす。

 

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 そして、今回はあのときのように時計が停滞することはなかった。着実に舞踏会への道を進んでいることを暗示する。

 54→55。

 

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本田未央。本日よりソロ活動始めます。よろしく」

 

 プロデューサーを遮り、自ら前にでて、自分の踏み出す一歩への決意を告げる。

 さて、やはりかつてとは違う展開になりました。

 依然として問題が解決されたわけではありませんが、それぞれがただ停滞したままではありません。

 シンデレラ自身の変化、プロデューサーという導き手の変化、それらによってか未央は即座に前へと向き直って一歩を進めていく心持ちのようです。

 それがとんとんと良い方向へと行くのかはわかりませんが。

 

 はい、というわけでアイドルマスターシンデレラガールズ第20話。シンデレラ自身が新たな道を見つけ、未知へと勇気をもって踏み出していくお話でした。

 歩みを進める者もあれば、未だ歩み出せずにいるものもある。

 しかし今回のお話でも、シンデレラたちが歩みだしていくために必要としたのは、仲間や他のシンデレラたちの存在でしたね。

 この関係性はこの先も変わらないでしょう。ならばきっと大丈夫。

 今は笑顔を忘れてしまったシンデレラがいたとしても、また誰かの笑顔がそこにあり続けるのならば、きっと笑顔は取り戻せるはずです。

 そうしてまたその笑顔に魅せられて、僕が笑顔をもらえることを期待して、また来週を待ちたいと思います。